第10章 8.
「あ、ありがとう……まさか間近でこんな一発が見られるとは…、」
おお、と歓喜した声で武器をしまいながらイアイアンが言ったので得意げに笑おうとした。
けれどもまただ、体の奥、胸の奥に異常を感じた。
『…っ……ゴボッ』
サンドイッチの詰まった胃からこみ上げる嘔吐ではない、溺れるような音を口から出し熱くこみ上げる物を吐き出す。ビチャビチャと鮮やかな赤が大量に飛び出した。
周囲では救急車を呼ぼうと叫ぶ声、悲鳴。
電話ボックスの近くに駆けつける3人。
「キャーッ!」
左手を見る。口から顎へと伝う鮮血がポタ、と青白い手の平に模様を付けた。
斜め下のイアイアンは昨日、聞いていたから理解している。動揺をしているようだ。
「まさか…それは君の──」
悲劇は終わらない。怪人は連日たくさん湧いて出てくるんだ。人間社会のようにシフト休憩なんて無い。
何かが近づく音がして、私がしゃがみこんだ電話ボックスの上…、私は左上の気配に振り返った。
「S級の風雷暴、みーっけ」
ドローンの本体が人間の頭。髑髏に似た痩せ細る輪郭が目に映る。そんな物体が左頬から思い切りぶつかる。
意外とパワーがあったようだ、もしくは電話ボックスの上に私が居たからか、結構吹っ飛んで私は地べたにドチャッと情けなくうつ伏せに転がった。
さっきの吐血でか、呼吸がしづらく、呼吸音に液状のものがつっかえている音がする。
『ぐっ、』