第10章 8.
「なかなかに硬いじゃないの」
3人でかかる相手は、とても硬いようで。
「ぬん!」
力や技で切り込んで、怪人を少しずつ弱らせているようだった。
しかし、怪人に目立った外傷はなく。
「相性が悪かったか、だがこの程度、師匠であれば軽く斬っている、な!」
オカマイタチとブシドリル、イアイアンのトリオだった。見渡すが、アトミック侍はこの場には居ないようだ。
私は近くの電話ボックスの上に飛び移り、しゃがむ。着地時に電話ボックスの天井はトス、と軽い音をさせた。
『…手伝う?』
「あらっ!風雷暴の…」
よそ見をしながらも敵のカマを軽く避けるオカマイタチ。流石というべきか。
切り込んでいくイアイアンの攻撃に、ブシドリルの猛攻に押された勢いで体を傾けるだけで、あまり効果は無いようだ。掻けてないのに痒そうにカマで体表…、腰のあたりをこする。
「痒いぜ、弱小ヒーロー共。この程度か?」
見てる限り、3人は弱くはない。相性が悪いだけだ。ここは私が相手をしよう、と試しに撃ってみることにする。
『感電しないよう、そいつから離れて』
相棒である銃に雷神の力を込める。とりあえず効くかな、とプラズマ弾を打ち込むと、感電したのか刺激に驚いて地団駄を踏んでいる。獲物として標的を変えたんだろう、私を狙う。
「なんだ、お前か?風神の対の、ヒーロー…風雷暴ってやつは」
効かないこともあるだろうと、さっきのは弱めであった。だから銃をしまい、右手を上げる。狙いを定めるように、鋼鉄のカマキリを指差す。
ビビ…、ドンッ!
私から怪人へ、斜め一直線に小規模の雷を打ち込む。バリバリともいわない、木の幹のような太い稲光が敵に撃ち込まれた。
制御はできる、周りの通電しやすそうな人間などに行かないようにしたんだから。怪人は、マグマのように太陽のように。黄色くも真っ赤な体表が柔らかい、臓器をジュウジュウ言わせて溶かしていく。
地面には怪人から逃れた雷がリヒテンベルク模様、先ほどの木の幹に合わせて根を張っているような、模様が刻まれている。
怪人の表面はとても硬い金属だったようだ。トドメを刺しに行かずとも死んでいた。