第9章 7.
「あまりにもアバウトすぎる情報だな、お前は」
『はふ、む…ぐ』
「……せめて食べ終わってから折り返し電話しろ、リスかお前は!」
通話の状態で少し時間を置き、口を空にした。
『…はい、リスですみませんでしたね』
「まったく…」
サイボーグでありながら、なんとなく今の表情は伝わる。結構、ジェノスは表情豊かだし、ため息もつく。
きょろきょろと警戒を怠らないままに、バナナシェイクを吸った。
「部屋に帰ってこないのか、と連日ゾンビマンが来る。なんとかしろ」
やっぱり来てたのか、と肩を落とした。
じゃあ、やはりまだ部屋には帰れそうもないな。
『しばらくは無理。理由は言えないけど…、』
「お前がクローン故に、能力で生命維持を補っている、それが今はガタが来始めている、と聞いたが…」
『……知ってるんだ』
また一口吸う。濃厚かつ爽やかな甘味。牛乳とバナナは最高のコンビネーションだ。
ジェノスは知らない。でも、私は言えない。これは私とゾンビマンの問題でもあるから、何故私が彼を避けるのかを。
一つ言えることだとすれば。
『私は、ゾンビマンの籠の中の鳥にはなりたくないから、だからまだヒーローとして活動していきたいんだ』
携帯越しに、ジェノスは短く、ああと返した。
『私だって、まだまだ強くならないと。世の中にはもっと強い怪人だっているんでしょ?サイタマが何体も倒したような、強い怪人が』
「…そうだな、俺もハルカと同じく、強くならなくてはいけない。だがお前が無理を、」
『あ、ジェノス電話切るわ、遠くにゾンビマン居る』
何か言っている最中ではあった…けれども通話中に、遠くに見えた人物を見て携帯をしまい、左手にバナナシェイク、右手にまだ手付かずのサンドイッチの残りを持って路地裏へ駆け込む。
現在居るのはQ市。思い切り番犬マンと会話をしていたから、番犬マンに場所を聞かれれば私の位置が分かってしまう。彼はとても鼻が良いのだ。