第8章 6.
「数は平均より少なく、あまり活発的ではないようだ。だが、生存する日にちはおよそ10日程と長い…、君の再生力は精子までにはそこまで付加されていないようだ」
「……そうかよ」
自分の種の有無を聞いた。再生力はあるから、これは数出してなんぼかもしれない、と考えているとジーナス博士は心配そうに覗き込んだ。
「君達の仲だ、良好なのだろう。けれど、焦って妊娠を迫るような事はしてはいけない。実験体にした私が言うのも躊躇うが、彼女は意志のある人間だ、意思を尊重して上げて欲しい」
そう言われていた。
そう言われたのに、強要した。無理矢理に迫って、逃げ道を無くして。
結局は逃げ出されて、協会に除名というのは無し、と本人からの電話を入れていたらしい。
大事な奴だから焦りすぎた。そのせいでこうも避けられている。部屋にも戻らず、隣人も行き先は分からないと言う。鬼サイボーグには訪問する度に何度も蹴られた。
唯一、怪人を倒している実績が皮肉にも存在を証明していた。あんなにも、以前より大きな力で葬っていく姿。
見えないタイムリミット。それが来るのはいつ頃なのか、ハルカが博士のもとで直接調べてもらわないと分からない事だ。
苛立った。
余計に離れていく事をしてしまったことに。
状況がある意味、似ているかもしれない。過去の時と同じだ。
だた、立場は違う、酷いことをするのは俺だ。あの柔肌を思い出した。やめろと言えば止められた。けれども、ハルカをかつて傷つけた男達のように、たまらなくて腰を振り続けたじゃねぇか。男として最低だったと思う。
いくら恋人だからって、俺の思うままに支配していた。なんて奴だ。俺があいつだったら、確かに距離を取るし、下手したら……。
別れを告げられる事もあるかも知れない。
頭を掻いて、俺は携帯灰皿を取り出した。