第77章 75.
自分ではない者による、もぞ、という布の擦れる音に起きる。
もう朝か…と瞼を開けると眼の前には愛おしい女。すやすやと気持ち良さげに眠っていた。
昨夜にはめ込んだ指輪が、カーテンから漏れた明かりで光っているように反射している。
遂に俺だけものになるんだ、と手に入れた満足感……、独占欲と嬉しさに頬が緩む。自分にまさか着ける日が来るとは思っていなかった…と眠るハルカの左手の側に俺の手を置き、互いの指に光るリングの光景を目に焼き付けた。
しかし、俺も彼女も共にヒーローであり、互いに再生力のある能力を持つ。ハルカはその他にも戦う力がある分、油断や強い敵などに遭わない限りは無くさないだろう。俺の方が無くしやすい。
ヒーロー活動してる時は外すべきか……と考えていると、うっすらと覚醒したハルカが小さく声を漏らした。
『おはよ』
「ああ、おはよう」
まだ少し眠そうだ。そりゃあそうだろうな、生理的要求の一つの睡眠だ、しっかり取りたいだろう。昨日は体力の消耗も激しいとかいうレベルではなく、頭と首が残って食い尽くされていた所を持ち直した。
もりもりと夕飯を摂り、遅くまでしっかりと愛し合ったから、二度寝くらいはさせてやりたい。
そういえば……、この部屋ではあまり食事らしい食料は置いていなかった。確か、生活用品ばかり揃えてしまって…あるのは酒とつまみくらいだったか。今日はジーナスの所に行くんだろう、もしもここで住むのならばハルカにも顔認証と指紋認証の手続きをしてもらってここに住んでもらいたい。
…年を取ることもなく、見た目だけはあの頃のままに止まった俺だが、もしも実年齢の見た目であったらハルカと結婚なんてする事にはならなかっただろうか……。
眠そうな頬を撫でるとくすぐったそうに笑う。
「少し外に買い物に行ってくるから、ハルカはもうちょっと寝てろ」
『買い物なら私も行く…、』
「欲しい物あるなら俺が買ってくる、お前は二度寝でもしとけ」
撫でる俺の手に猫の様に擦り寄る姿はくるものがある。しかし、ここで押し倒して昨晩の続きをするのはハルカを壊してしまいそうだ。
壊すといっても、繁殖期の獣のようにという意味合いで。