第72章 70.
エレベーターに乗って上へと昇っていく。よりによって最上階の部屋だった。
わざわざ最上階に住むのか…と思っていたけれど、部屋に上がれば納得する事になる。
指紋での解錠。中に入ると薄っすらと染み付く煙草の匂いがする。
電気を着けると、今まで私が住んでいた部屋とは規模の違う広さ。S級ヒーローって凄いな…いや、ジェノスや私もS級だった、こういう部屋に住む勇気と言えば良いんだろうか。
借りてきた猫の如く、そろそろと部屋を見て回る。広くてデザインの凝った部屋…暖色の照明が落ち着いている、けど…。
『壁に武器、飾りすぎでは…?』
「だから武器庫って言ったろ…」
リビングやら寝室やら、トイレまで何かしら武器が置いてあったり、壁に設置されたりしている。インテリアじゃないんだぞ、武器って…!
広いリビングにはお硬いトランクもある。多分銃だな、と中身見ずとも分かる。
リビングには棚があった。棚の中がガラスで見えるようになっているけど、ウイスキーだとか城下町のナポレヨンだとか、軽くバーコーナーのようにも見える。
生活感が無いのか、この男は。私の…今は崩壊した部屋も言えないけどさ。
床に荷物を置き、興味が湧いたのでパタパタと小走りで各部屋を見に行く。
ゾンビマンは窓を開けて換気を始めていた。
キッチンはあまり使っていないのか、調味料が最小限。冷蔵庫を順に見ていけば冷凍庫は霜が凄く、アイスが詰め込まれている。甘党め。
冷蔵庫内は瓶詰めのピクルスや、賞味期限切れの牛乳、袋の開いた賞味期限切れのウインナー、変色したケチャップや味噌など。
野菜室は一度開けて閉めた。うん……うん。明日、ちょっと家に帰る前に片付けた方が良いよね…。
見た感じ、酒のつまみ用って感じのキッチンだった。さっき見たトイレは割と綺麗、お風呂は見ていない。部屋は掃除をしているのか綺麗ではある。
うーん、と考えながらリビングにゆっくりと進んでいると、上半身裸のゾンビマンがサバイバルナイフを持って立っていたからびっくりして立ち止まってしまった。夜道で会いたくない装備だ。
『なっ何!?』
「あ?ちょっと風呂場を汚してくる」