第72章 70.
「部屋は任務によって変えてるんだが、一番広いのがJ市の部屋でな、そこに行く」
『へー、潜入とかそういうので部屋変えるんだ…』
椅子から腰を上げて、出口へ一緒に歩く。買った荷物はゾンビマンが持っていく。
「まあな。それから武器庫としても活用してるからあまり弄んじゃねぇぞ?銃によっては腕の骨が複雑骨折して部屋がオジャンになる」
『ヒェッ…』
再生力ありきの武器じゃん。
後はちょっと煙草臭いから換気するだとか会話しながら店の外に行き、タクシーを呼び止めて乗り込む。
知り合ってからも付き合ってからも初めて部屋に上がる事になる。前に電話した時にお酒を飲んでいたのはどこなんだろう?今から行く部屋なんだろうか?
……あんまり私物が無さそう。
武器と服と…お酒はありそうだな、と想像を膨らませてタクシーに乗り、街を眺めているとJ市に入る前にタクシーはゆっくりと停車した。
「ドライバーさんよ、すぐ戻るからここに待っててくれよ。ハルカ、お前もここにいろ」
『う、うん…?』
小走りに路上駐車中のタクシーから飛び出し、歩道を駆けていってビルの中に入っていく。
待ち時間というには短い時間で駆けてくる。本当に寄り道といった感じで、何の用だったのかは私には教えてくれなかった。
そのままタクシーは私達を乗せてゾンビマンの住まいへと進んでいった。
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『すご……』
あまりにも予想外だった。
どんと構えたマンション、そこで顔認証で入室。
開いた口が塞がらない。いや、そんな高級感ある所に住まないでしょ、とその背を見ていると、視線に気が付いたのか、振り返った。
「…?なんだ、驚いてんのか?」
『そりゃあ、ね…住居には拘ら無さそうに見えてたから…てっきり、ボロアパートとか、私の部屋くらいみたいなこじんまりしてる所かと…』
「ははっ、言うなぁ。確かに金掛かんねぇのが一番だけどな…ほら、怪人によっては鍵も無くされるし、武器も多い。なら、こういうのが手っ取り早く住みやすいんだよ」
『物凄く分かりやすい。高頻度でゼンラマンになるもんね…』