第71章 69.
真剣に正面から言われて嬉しくないわけが無い。
もの凄く好きな相手だ、命の恩人でもあり、追いかけたかった背中。77号だった頃に子供ながらに憧れた相手だった。
それは初恋だったのかもしれない。小さいくせに、見た目が20代~30前半の男を好きになるなんて。
寿命が迫ってからのまさかの延命に、とりあえず食事などを怠らなければ同じ様にずっと一緒に居られる。
それは彼以外の、今を必死に生きる人達を100年以内に過去へと置いていくという気の遠くなる人生…私はそれでも構わなかった。
『喜んで、』
嬉しくて嬉しくて、そのプロポーズをする男の唇を塞いでやる。
小さく笑みを零して、お返しにと私も返事をする唇を塞がれ、互いに貪るように唾液を奪い合った。
****
ヘリから降りて、協会で私の携帯を新しく支給してもらい、直接シッチさんに今回の事を報告をした。
あえて移籍するふたりの事は言わない。きっと本人達が言うべきことだし、私もゾンビマンにまだその件については言わない。今はとてもそんな気分じゃなかった。
『家に連絡して今から帰るって言わないと…』
むっとした顔で私が連絡するのを見ている。
空は全体をオレンジ色が包み込んで、地平線近くはやや紫になっている。夕方から夜になってしまう。
「おいおい、お前はいい子ちゃんか?今夜は帰らせねぇよ」
『え?』
携帯の先でもしもし、という朝聞いた人物の声。ジーナス博士だ。
出たのを確認して、会話をしようとした所で新品の携帯をゾンビマンにぶんどられてしまった。
「おう、ジーナス博士よ、ハルカは無事だ。それから今日はお前の娘は返さねぇ…あ?はは、こいつはもう俺の嫁だ、よ・め」
勝手に盛り上がっている会話に、こっちからもぶんどる。ニヤニヤする男は携帯を耳に当てる私を愛おしそうに見ていて、少しばかり顔が熱くなった。