第70章 68.
今のお互いの状況を聞きながら、共に早足でこの空間から去っていく。
通路に来たらタツマキは空間を超能力で潰す。地盤沈下とか大丈夫かな、とも考えるけれどサイタマや超能力持ちが居るからもしもがあってもなんとかなるんだろう。地上の事は分からないけれど…。
通路からさくさくと進んだ所で肩に手を置かれ、振り向けばゾンビマン。そういえばいつもと違う服だ。
「靴もないだろ、抱っこでもするか?」
そんな事を言って、うっすらと笑う。
抱っこって。今までに何度この男に横抱きにされたか。それに体が再生してるし、そんなにヤワじゃない。靴の無い状態で過ごした日々も過去にあったし。
皆の前で横抱きとか、それは恥ずかしいからやめて欲しいものだ。
『結構です、自分で歩く』
「じゃあ、俺の靴でも履いとけ、無いよりはマシだ」
そう言って履いているブーツを脱いで置かれた。片手を掴んでブーツを履くと重くて大きくてぶかぶかだけど、素足よりはマシだった。
さんきゅ、と言うと短くおう、と返された。私に靴を貸したらゾンビマンが靴が無くなる。じっと見ているとその場で靴下を脱ぎ、丸めてジャケットのポケットにしまってる。…全裸になる事がある分、この人も素足の方が慣れているのかもしれない。
『ところであんた、いつもと違う服だけど、こういう服も着るんだ?』
今じゃぼろぼろだけれど、ジーナス博士が来ているようなグレーのワイシャツに黒いピチッとしたジャケット。その上に着ていたコートは今は私が着ている。
ところどころ切り裂かれた穴が開いてる。ここに来るまでに死闘を繰り返してきたんだろう。血も、何かの肉片も着いていた。
ゾンビマンはこちらを見ながら少し黙って、言いづらそうに言葉を出す。
「お前が後日改めて言えって言うから…」
『うん、そうだった…流石に仕切り直しだよ、今日は。私も着てるものも風神の骨の入ったペンダントも何もかも無くしたし…』
あれしかなかったのに。
非常に残念で、今日は色々と疲れた。気分が乗らない。色んな人に迷惑を掛けてしまったし。
袖の長い服をまくって、自分の首元を指す。ずっと身につけていたものが無い。
それを見て、少しばかり顔をしかめられた。