第70章 68.
手の指までしっかりと動かせる。残る食べ物は自力で食べられるからと、容器をジェノスから受け取った。
上半身を起こしながら、両手でゾンビマンの上着を抱え込む。怪人に服も下着も何もかも引きちぎられていたから着る物がない。勝負下着よりも隠す所のない下着なんて持ち帰る意味も無かった。
もぞもぞとロングコートで体を隠し、ボタンでしっかりと留める。トレンチコートタイプ故にがっぽりと前が開いちゃいるけどボロンっと丸出しよりなマシだ。粗末過ぎずでかすぎない、標準くらいであるけれども谷間と膨らみが外気に触れている。
飛び跳ねたりしなければ出ないでしょう、多分。
この場にいるヒーローに頭を下げた。
『助けに来てくれてありがとう』
それを見てニッ、と笑った金属バット。汗でか、髪はオールバックとなっている。
金属バットは愛用のバットを肩に掛けていた。合流したから手にできたんだな。そのバット、返り血が付いて赤く染まってるけど。
「借りはちゃんと返したぜ!」
『…ん、ありがと』
「それじゃあ脱出しましょう!強い怪人はほとんどいませんし、駆動騎士さんが入ってきたルートが出口までをマッピングしてます、帰りは安心ですね」
「おう、じゃあ行きながら弟子らと駆動騎士に通信入れとくか」
その場に立ち上がる。
靴もないので、素足。こう立ってみると随分大きな敵を倒したんだなぁ、と残りの巻き寿司を食べる。穴を掘る時はピタッと体毛である針を寝かせ、ツルッとした見た目で、ここに居る時は針を伸ばしてハリネズミのような見た目になっている。
また、山積みにされた怪人の死骸、よくあれだけ居て体が食い尽くされなかったものだ。
「で、なんでお前ゾンビマンみたいに死ななくなってんの?ハルカの更なるクローンとかじゃねーよな?78号だったりして」
サイタマの質問に、説明してなかった事を思い出した。78号って私の次って事か。いやいや、まさか。
『違うよ。…しばらく部屋に帰れなかった時にクローン故の寿命が来てたんだけど、治療とか色々あって…、ご飯食べれば再生出来るようになった』
「なんだそれ」
『(指折って数えて…)ご飯食べれば寿命と体、長持ち、…20文字以内に収めたけどどう?』
「余計に分かんねーよ!てか、お前もZ市の部屋、無くなっただろ?今どうしてんだ?」
『その件なら、実家から通わせて頂いてます』