• テキストサイズ

欠落の風雷暴

第69章 67.


そこまで説明され、表情を変えずにジェノスがゾンビマンに続ける。

「今のお前は、骨は脊椎と肋骨、臓器は肺や胃心臓が再生済みだ。ゆっくりと再生するんで見ごたえがある光景だぞ」
「ハルカ、あなた内臓が生えてくる感覚ってどういう感じなのよ?」

生存本能を何一つ満たせないこの状況じゃ治りは遅いはずだ。何か食べるにも内臓が出来上がらないと始まらない。
だからといって中身を見られるっていうのも…私は教材やトカゲの尻尾じゃないんだけれどな、と考えながら感覚を表現する言葉を探す。

『(生えてくる…)正座した後のビリビリした感覚というか…、神経がざわざわしているような、かゆみにも似た感覚じゃないのかな…』
「…ふーん」

「なあ、ジェノス、これがションベン貯める膀胱?」
「それは子宮です」
「へぇ…うわ、見て良かったのかこれ、あ、上の方、胸筋か?」
「おそらくは乳腺でしょうね、まもなく胸が再生していくと思われます」
『……あの、そろそろ隠して貰っても?』

人は裸を見られると恥ずかしさに裸体を抱いて隠すけれど、私の場合…臓器を見られたらキャーともなんとも言えなかった。ただ、素肌の再生後には恥を感じた。

布の擦れる音、頭上でゾンビマンが上着を脱いで私の胴体の上に被せられる。すると今までガン見していたヒーロー達は興味を無くしたのか蜘蛛の子を散らすように周りから離れていく。

「あーあ、生の人体模型ショーの終了ね…ま、なかなかの見応えあったわよ?」

ふわふわと浮きながらタツマキはそこら中の怪人の死骸を浮かせて一箇所に山盛りにし始める。多分、見るものも無くなって暇になったんだろうね…。
ガサガサと鳴る紙袋の音。アトミック侍がいじっているようだ。

「じゃあ、協会から支給された飯食って再生力早めとけ。ゾンビマンに食わして貰うか?」
『贅沢を言うならゾンビマン以外が良いわ』

不服そうな顔で見下される赤い瞳。
こういう所で痛々しいのは困る。自力で食べられるなら食べるけど、足の感覚も手も無い。皮膚もまだない(と思う。ゾンビマンの上着で隠れてるから分からないんだけれど)
私の要求にニヤニヤしながら、ゾンビマンを指差し愉快そうに笑っているアトミック侍。

「だははははっ、だってよ!他のやつ食わしてやれ!」
/ 214ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp