第67章 65.
「うわ、きも!なんか蠢いてんだけど」
通路から見えたのは一斉にこちらをみる大きなハリネズミ。1体だけ異様に大きな個体が居るが動かず。他にもちらほらと動かない個体もいる。
草原のように見えたのはハリネズミの針だ、さわさわと動いてそう見える。
それぞれの顔…いや口元は赤く、特に集中する場所ほど顔を真っ赤に染めていた。
「…焼却「ジェノス、ハルカいるから止めとけって!」」
手を向けた鬼サイボーグを止めて、飛び降りる。走りながら殴って、ハリネズミ達を駆除していく。
それに続いて、他のヒーローもハリネズミを倒していく。背中の針は硬いが顔に向けて攻撃すれば充分だ。それでも針を飛ばして怪我はする。
「なによ、ここ…大量に居て気持ち悪いじゃない!」
タツマキまでやってきて、混沌とした空間に変わった。
ハゲマントに飛びかかるハリネズミは軽く殴られる度に壁にめり込む。何体かめり込む内にタツマキが崩れるからちゃんと後先考えろ、と超能力で壁にぶつかる前に床にめりこませていた。地響きが来るのは変わりはしないが…。
野球のボールの様に打ち出され、バングがタツマキのように叩き落としている。こいつらの一匹でも逃せばあの大きな個体のような、アジト作りに加担するヤツを野放しにするって事だ。
……プリズナーが敵を抱きしめて駆除する姿。ハリネズミの針はボキボキとへし折れて口から泡を拭いている。
「食事ノジャマダ!」
「ごはんのついか?」
「にんげんのればぁ、とろっとろでおいしいです」
生きていてくれ、と願いながら咀嚼をしている1メートル程の高さのハリネズミを銃で撃ち殺す。
頭上を怪人の死骸が飛び、壁に当たって落ちていく音。切り刻まれる音。それでも食べるのを止めない怪人。
麺類でも啜るように、血まみれの臓器をすすりながらこの場から逃げ出そうとする怪人はアトミック侍によって細切れに斬られていった。
個性があって、犬みたいな顔もあれば人面のやつもいる。その口元は真っ赤で肉片が生々しく付いている。何の肉かなんて聞かれずとも分かる。
進む足は重く、ブーツの底がぬかるむ。土と血液で泥みたいになっていやがる。
そして俺は立ち止まった。後から続く童帝も俺の横で立ち止まる。目の前にあった"それ"を眺めて。