第7章 5.
風を起こして索敵をする。いつもと変わらない行動。変わっているのは、いつ雨に振られても構わないようにずっとあの時のポンチョを羽織っているからだろうか。
あの事を忘れるように、3日前の最後に見た恋人を考えないように。
大きな学校の校庭、逃げる子どもたち。お揃いの服を着て…どうやら体を動かす授業中だったようだ。きゃあきゃあワーワーと悲鳴を上げて怪人から逃げ惑う。
屋根や木々、時々空中で風を出し踏みしめて、急いで怪人の所へとたどり着く。間に合った、怪我人は今の所、怪人に直接関係したものは無さそうだ(転んだ痕はあったようだけど)
「ヒーローだ!」
きゃあきゃあワーワーという声は悲鳴から歓声に変わっていた。やっちまえ、倒せ倒せと大声で応援される。
『で、あんた何?学校の子供らに手を出そうとして。怪人ロリコン・ショタコン野郎?』
人型で金ピカの怪人。片手に書物、片手に丸太。
「俺は、子どもたちに勉強を叩き込みたいだけなんだ!俺の名前こそが、怪人ニノミヤ金地蔵だから!」
言われれば顔は地蔵だ。なるほど、だから書物を持っていうのか。叩き込むのは丸太で物理か、グラウンド内にはたくさんのへこみがあった。
金、地蔵…ね。
『ほい、』
パチン、と指を鳴らし雷を自ら放つ。あたる瞬間に眩い光、ドンという直撃音。金地蔵は断末魔さえ上げるまもなく、グラウンドに金色の水たまり、いや金たまりを作った。
携帯を出して、協会へと連絡を入れようとした。
…着信あり。ゾンビマンからの着信がまたあったようだ。仕方なく着信が切れてから、協会へと連絡を入れた。
きゃいきゃいはしゃぐ子どもたちは私を取り囲んで、空いた片手に群がって、握っていく。
教師に怪人の溶けた金の場所に近付けさせないように、と伝えて私は近くの木に飛び乗った。
空に手をあげて、風を起こす。ここより5時の方向が賑やかなようで。
木を蹴り、空を踏むように風を出して近くの民家、屋根へ。今日はどこのビジネスホテルに泊まろうか。そんな事を考えながら。