第65章 63.
鬼の血相で全力疾走する金属バット。
後ろには童帝が全力で走ってきいて、更にその先には予想外な事に……風雷暴ではない、ハリネズミみたいな怪人が追ってきている。
「オイ、俺の武器持ってるやつは誰だ!?」
「引き連れて来たか!早くこっちへ来い!」
何があったのかはとりあえず後ろのやつを倒してからの話だ。ブシドリルに目配せし、ふたりの要望する物をすぐに渡せるように手配する。
俺とイアイの間を通って金属バットと童帝が駆け込んできた。ついでに引き連れてきた土煙が凄い。
ドドド、と走り寄る怪人にイアイが切り込み、勢いでその大きな肉がぶつかる前に俺が斬ってばらす。
ボトボトと肉片が転がった。
ゼェゼェと息を切らし、金属バットは手に握りしめるのは己の武器。
童帝はランドセルを開け、色々確認している。背負っていた方はペコペコとコンパクトに畳まれていく。教科書が何冊か覗かせる手提げ袋に変化させると、ブシの持ってきていたランドセルに取り付けている。
ランドセルってそんな機能はなかったハズだ、改造でもしてんだろう。
「風雷暴のハルカはどうしたよ?」
聞くと、童帝はランドセルからロボットの犬を取り出して、ズボンのポケットからゴミを取り出して顔に近づけて…警察犬みたいな事をしているな。
「ここのアジト内、なんで短期間にこんなに広く作れるかが分かりました」
「今俺達を追ってきた奴居たろ?アレは子供だ、この通路を掘るほどの大きさの親が居るんだ」
質問に答えがかち合わず、首を傾げてしまう。
足元の角切りの肉片を蹴って転がし、これが子供ね、と言われた事をとりあえず理解しようとした。
「初めに会った個体をハルカさんが倒したんですが、次に会ったのがその親で、ハルカさんに食らいつきながら地下へと潜って行ったんです!」
「はぁ?食らいついたぁ?大丈夫なのか?」
「胴体です、お腹の辺り!その前に右手も負傷はしてたんですが、傷の治りはゾンビマンさんほど早くはない、となると…」
ピピ、と機械音がして、ロボットは走り出す。こいつらが来た道だ。
それを見失わないように、童帝も走り出す。
「追うにも逆に追われ、武器も無くした所でよ…サンキューな!あいつに借りがあるからちょいと助けに行ってくるわ!」