第64章 62.
ビクビクと痙攣し、伏せるようにその場に倒れる怪人。
私の刺した刺身包丁が刺さったままに、そこからは血涙を、もう片目からは涙を流し、虫の息だ。全身をひくつかせて呼吸の回数が減ってきている。
私は肉体の修復の為に蒸気が出ている右手を抑えながら、トドメを刺そうと近付いた。
「ギュウウ…ン、ま、まぁ…ママ…ぁ」
「ママ?こいつママって言ったのか?」
金属バットが、くの字になりかけている鉄の棒の先でボロボロの怪人を突く。
武器はここに来るまでに駄目にしてきた。曲がっていてもそれが最後だから手放せない、合流までは。
童帝君はたった今、呼吸の止まった怪人の顔を覗き込んだ。
「これで幼体っていうのか…、これで大きいのに成体はもっと大きいハズだな…、」
頭上からパラ、と土が落ちてくる。
止まってる暇はないから、端末を見て合流を一番の目標にして足を進めた。
ピリ、と袋を開けて栄養摂取をする。右手はまだ開いた傷口から血液は滴っているけれど、じっくりと蒸気を上げて回復している。食べだしたからか、速度が体感的に僅かに上がっている。
「本当にゾンビマンみたいに治ってんだな…ソレ」
シュウシュウと蒸気を出す右手を少し上げた。
風神・雷神の力を出した後に怪我をしたから体力を消耗している。口の中のレーションを飲み込んで、右手を下げた。
『怪我が治るのは良いけれど、痛みからは逃げられない。その点、体を真っ二つにされても痛そうなふりもしないゾンビマンは強いね…』
「おめぇもそんなに痛がって無さそうだけどな?」
『まさか。物凄く痛くて、発狂しそうな所、別のことを考えて耐えてるよ』
ある程度、痛みに慣れても痛みは痛みだからなぁ、と微風を吹かせて状況を確認しながら進んでいく。
この先には3体、怪人が居る。
「武器持った怪人が居たら奪うか」
「山賊的戦法ですね、それ…でも、即席の武器でここまで良く耐えたもんですよ」
くの字に曲がった鉄の棒を見て、この先を見る。
どれくらい保つのやら…。
「そんじゃ、次は俺が行きますかァ!」
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