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欠落の風雷暴

第61章 59.


ピッ、とレーションを開封し、へし折って口に詰め込む。
咀嚼をしながら、体表にパチ、と電気が走り出す。それを見て童帝君達はシートを被って被害に遭わないようにしている。その様子を見届けてから、私は駆動騎士の手を握った。
ジェノスよりもつるつるとしているけれども硬く、大きな手だ…。

体内の雷神の力を解放する。
ビビ、バババチッ、と音を立てて薄暗い通路が青白く目が潰れる程の眩しさ。手と手の溶接をしているみたいだ。
そして急速に体力が抜けていく…、口いっぱいのレーションを飲み込んでも雷神の力に変換され続けているからか、空腹感がある。
片手でもう一つ、口で開封して急いで口に放り込む。ちょっと焦げてしまった。
まだバチッ、ドガガ、と賑やかで眩しい中、駆動騎士が大丈夫なのかちょっと心配になって一度力を流すのを止める。

『…あとどれくらい?』

手を出していたのを引っ込め、駆動騎士は自身の掌を見つめ、私を見た。

「うむ、これくらいで充分だろう」

ジィィ、と駆動音を出しながら、来た道を振り返って私達を見る。
合流してモバイルバッテリーみたいな扱い受けちゃったな…でも初見で蹴っちゃったし文句が言えないな、と口に出さずにその単眼を見上げた。

「それでは私はこの先、左側から進んでいく。地上に戻りたいならマッピング通りに進むと良い。怪人を倒す余裕があれば、その他の道を行け。
では失礼する…

──"香車"」

何やら漆黒の箱が変形し、駆動騎士を包み込む。
あっという間に駆動騎士は厳ついバイクの形状に変化した。

ドルルルルッ、ギャア!と走り去る先で更にギャ、という悲鳴。怪人でも轢き殺したのかも。
レーションを2本剥いて食べながら、端末を覗き込み、駆動騎士の去った先を見る。
その方向へ急ごうと、腕を振った所で手首をがっしりと掴まれたので振り向いた。

「だから暴走すんなっていってんだろーが…」
「ハルカさん、せめて僕達が協会に頼み込んだ支援物資を受け取るまでで良いですから、一緒に行きましょう、ね?」

『……うん、分かった』

童帝君はきっと分かっているのだろう、最大の武器の子供らしさを出し、眉を下げ、少しばかり涙を浮かべて言うもんだから。
10歳ってこんな魅力を持っているのか、と可愛さに負けた瞬間だった。
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