第61章 59.
仕方なく蹴る形でその者に掛かる。
急速接近してきたその者は腕で私の蹴りの勢いを殺す。勢いを、というより雷が吸収された気がする。
蹴ったお陰で勢いはほぼ死に、近くに着地した。
相手もその場で止まりきれず、砂埃を上げながらスライディグしてようやく止まる。
「駆動騎士か!」
駆けつける金属バット。
上から下まで見て、私を見る。眉間にはシワが寄っている。
「雷食らったろ、大丈夫なのか?…ってか風雷暴、突っ込みすぎなんだよ、てめぇは!」
『いや、ホントすみません…(どちらにも)』
「大丈夫だ、電力に変換した」
ジー、と駆動音が聞こえ、仮面のような顔面には単眼とも言えるような目。
瓦礫の上以来だ。彼も無事だったのか、それともパーツを交換したのか。元気そうだ。
「お前達はどれくらい移動してきた?」
その質問には代表して童帝君が答えてくる。
「僕たちは最下層から怪人を倒しながら来ました。最下層を一階とすると、ここは三階になります。駆動騎士さんはここまでどれくらいですか?」
「ふむ、なるほど…、こちらは合流を目的とし、最下層へと向かっていた所だ。地上からここまで八階下がった、最下層は十階か…」
キョロキョロと薄暗い通路内を見て、童帝君は続ける。
「他のヒーローの現在地を見るに、縦はそれほど深くなくても横に伸びてるみたい、そして通路が脆い。
僕達が居た通路の奥だって、まだ穴を掘ってる途中…、怪人協会の生き残りがしぶとくアジトを作っているんだと思います」
「そうか。では私が入ってきた場所からここまでをマッピングした物をデータとして端末に送る」
駆動騎士から童帝の持つ端末へとデータを移し、こちらへと向き直る駆動騎士。
ジー、という駆動音を出している。
『な、なにか…?』
「差し支えなければ、力が余っている場合、先程のような雷を出して欲しいのだ。ここに来るまでに怪人を倒しながら来た為に、戦闘用のエネルギーが不足している。
武器もない状態で気をつけろ、というのは酷だが…自称ではあるがこの前の幹部レベル…、レベル竜相当の怪人も居るぞ」
「今まで俺達が戦ってきたやつは運が良かったって訳かよ…」
顔に掛かった髪をかき上げて、金属バットは言う。
駆動騎士が握手を求めるように手を差し出した。
「ここから頼む」