第59章 57.
賑やかな空間を前に察し、素掘りの洞窟というか、怪人のアジトの通路にて突入前にアイコンタクトを取る。
それぞれが両手を背面にやり、拘束でもされているフリ…そして怯える演技をしながらその空間に入った。
「うわーん、やだやだやだぁ~!食べないで~!」
「家に帰らせてくだざいっ」
『死にたくないっ、死にたくないよぉ~!』
哀れな人質(食料)のふりをしながらその広い空間に入場した。
思った通りだ、ソースの焼ける匂いや、揚げ物の香りがした。厨房か食堂だろうと推測していたが、ここは食堂だった。
きっと奥に厨房があるのだろう。食堂ではトレイを持ってよくわからない料理を席に持っていく途中の怪人や食事中の怪人などが存在し、ぱっと見て15体は居る。
「…あ?人間がなんで逃げ出してんだ?」
『ひぃっ、エテモンキー様が刺激的なスパイスを用意して戻って来てしまうわっ』
「あー、あいつら人間を食うためになんか調味料用意してんのか…」
警戒が解かれたと思う瞬間、童帝君を見る。頷き、彼は後ろに隠した透明なシートを即座に広げ、金属バットがそこに納まるように屈んだ。
『こんな刺激《スパイス》とかね!』
バッ、バババババ!と集まる怪人に放電する。
一気に8体は葬ったようで、痙攣したり蒸気を放ちながらそれぞれの体が硬直している。ゆっくりと傾いて地べたに転がった。
「んだと、この…、あっ!電気放つやつって確か…っ」
攻撃体勢に入るロバ顔の怪人。
シートをめくって飛び出す金属バットが鉄の棒で殴りつけた。
「ウマ面はすっこんでろ、オラァ!あと何体だ!?」
「見える範囲に7体居ます!」
『奥の厨房にあと3体隠れてるよ!』
フィルムを持ちながら、童帝君は厨房側へと走り出す。
「厨房は僕がっ!スケールソードで戦って来ます!」
『OK、気を付けて!無理な時はこっちへ引きつけて!』
厨房へと走る、童帝君を狙って包帯だらけの怪人が襲いかかろうとする。
左手を向けて風で切り裂く。真っ赤な包帯怪人となった。