第57章 55.
ここにはマップも無い。あの時のような下調べあっての発信機も無い。
だからこそ風で地形や怪人が居るかどうかも調べないといけない。あと、装備が万全ではないヒーローが行動を共にする状態だから雷神の力を全身に纏って近場で戦うのは無理そうだ。
なんか無いかな、と自身のポケットを漁る。飴玉と、携帯と、ハンカチと…
質感の違う布?
取り出すと見覚えのある、ちょっと泥汚れのついた袋。
「あ!それって…」
『雷や、人質の子が感電防止する巾着袋…!』
童帝君に渡すと、仮縫いされたような紐を引っ張る。
薄い透明なシートが広がる。本来ならばあの時、人質の子供を感電から守る為のアイテムだったやつだ。
「まだ使える!これで僕らは大丈夫です、羽織っていれば雷対策になるんで!」
「場所が変わっても役に立ってるな…」
ただ、金属バットがしゃがんで童帝君と密着しないといけないんだけれど。
雷落としたりする時はせめて声掛けてからにしようか…。
「さて、準備は整ったな、怪人協会の生き残り、内側からぶっ飛ばして行こうぜ!」
通路の真ん中に立ち、両側に手を広げて風を吹かす。3時の方向は堀半端の通路、行き止まりで生体反応なし。
9時の方向、通路は短く上りの階段あり。階段上には見張りか、生体反応…、怪人の者の気配あり。
金属バットが先頭に、次に私、最後に童帝君で階段方向へと足を進めていった。