第57章 55.
カチャカチャと怪人の持っていたスマホを弄る童帝。
ランドセルに小さな工具があり、小型のロボットと同期させたり、チップを埋め込んだりと忙しそうだ。
その間に、私は鉄格子の棒を雷で一部溶かしては鉄棒を作り出し、捻れた槍や、金属バットに予備としての棒を作っていた。
…本当に無いよりはマシ、という武器って感じ。
「うひぃ、おやつがあんまり無いっていうのに…」
『それならたこやきのレーションならあるんだ。ふたりにも分けとくよ』
「聞いたことのない味ですね…、美味しいんですか?」
『これが意外とイケるんだよ』
バッグを開け、博士に詰め込まれたレーションを数本取って分ける。
レーションは18本入っていた。6本並んだものが3列の18本。見事に食料バッグだ。
その私のバッグの中身を見て、金属バットは呆れたようにため息を吐く。
「豚神程じゃねーけど、あんたそんなに腹減るやつだったか?」
「確かにハルカさん凄く食べますよね…プライベートでも会った時、すごい量食べてましたし」
「もう妊娠してんじゃね?」
『妊娠は流石にしてないはず…』
数日前まで生理あったし、それ以降はしてないし…。
しかし、私ただの腹ペコキャラと思われてないか?と思うけれど、事情を知ってるのは一部だし仕方がない。
クローン故の定め、その定めからの抜け道と能力向上、後付でゾンビマンの再生力を分けてもらった事とその代償を手短に話すと納得してもらえた。
その説明の間に、童帝君のロボットの調整も終わったようだ。
休憩がてらにレーションを齧る童帝くんからはほんのりとチーズの匂いがする。美味しいやつだよね、大当たりなやつだよ、それ。
『…っていう事で能力の補充と再生力の為に食べてる。だから食料があるうちはなんとかなるけど、無いと短期戦型の私は大怪我をしたら長期戦は無理かもね』
「残るのが寝るかヤるかだもんなぁ…」
『一番効率が良いのが食事って事で他2つは戦地では無理でしょ』
「ですよね…」
「ゾンビみてぇじゃないか?人は狙わないよな?」
『人肉は食べないよ、多分』
人を見て食物とは思えない。理解に苦しむ。
「多分ってなんだよ…」
『元がクローンじゃなくて、ホムンクルスだったらありえたかもだけど。遺伝子情報の供給は私、要らないし』
ホムンクルスだったら、食べていたかもしれない。
そこは元クローンで良かった。