第56章 54.
「てめーらのせいで俺らのプライベートが台無しだゴラァ!風雷暴、脱獄だッ!盛大にやったれ!」
「あの端末はここでも通信可能みたいですから、あの端末には雷当てないで下さいねっ!」
『了解!』
バチィ、と猿の怪人に木の根のような眩い光。
ビクビクッと震え、蒸気を出しながら猿の怪人は画面外に倒れ、画像が一度揺れた。
風雷暴のハルカは鉄格子を握り、バチバチと電気を出す。手を離し違う位置にも同じ様に電気を与え、電気の良く通った箇所は赤くなる。溶接でもされている様に見える。
むしられる鉄の棒、檻から出られる穴が出来上がり、鉄の棒が手から床に落ちる音がガランッ!と鳴る。
画面中央…そこから抜け出し、カメラに向かって駆け寄る童帝。端末を持ち上げた。
「わっ、ちょっとこれ録画じゃなくて生放送されてますよ!?」
画面いっぱいには大きく映される少年の驚く顔。
「ああん?テレビとかネットにか?だったら協会に俺のバットのストックあったろ、俺ら丸腰だからよ、一本誰か持って来いや!」
「場所もまだわからないのに…あっ、この端末ここでも通信出来るやつじゃないか!ここをこう、…これZ市の外れのあたりですね、位置情報を協会に送るんで僕のストックのロボットアームβの入ったランドセル一緒に持ってきて下さい」
『私?私は武器まだ作られてないから、手軽に食べられるものお願いします』
「ウーパーイーズとかお使いじゃねーんだよ、風雷暴!」
『能力を出すための燃料みたいなモンだから良いでしょ』
画面には3人の自撮りが映る。
画面を覗き込む小学生と、鉄の棒を肩に載せた今どきの青年と、おめかしをした女性…いや、3名のS級ヒーロー達。
「……それじゃあお願いしますねっ!」
ブツン。ニュースに流れる生放送は終わった。
「つ、次のニュースです、ええと、只今怪人警報がK市に──」
新しい違う地域の警報が流れる。
あの怪人の自撮りから始まった放送中から動き出しているもの、放送が終わってから動き始めるもの。
それはヒーローや、協会の者達だった。