第56章 54.
──テレビには緊急生放送が流れる。
一般人、ヒーロー、協会の者、そしてジーナス博士や丁度話をしに来ていた、いつもよりも服装をきちんと着こなすゾンビマンが皆、それぞれの家庭のテレビ画面や、街頭の液晶に釘付けになった。
「こちら、映像が届いております!」
映像には生放送のロゴ、そしてザザ、とノイズが入り、画面には自撮りをする魚顔の怪人と猿のような見た目の怪人。
「やっほー、人間ども今日も餌食ってだらだら生きてる~?」
「ヒーロー共にこの前は酷いことされたからね~、俺達も仕返ししてやろうってね、この映像流させて貰ってまーす!怪人協会全滅させた気になってた?馬鹿じゃないの?まだ俺達、生き残ってまーす」
2体の怪人達の顔のズーム。下卑た笑みと、僅かに上下する画面。
「という訳で見せしめに一般人を拐っちゃいましたー!」
ヒュウヒュウ、と猿の怪人が囃す。
魚顔はパクパクと口を動かして効果音ともなんとも言えない音を鳴らした。人間界のテレビ放送の効果音のつもりかも知れない。ちゅぼちゅぼちゅぼ、と池の鯉の放つ音そのものだ。
「今から攫ってきた一般人を迎えに行って、仲間たちと手足を少しずつ千切って肉パーティをお届けするね~!良い子のお友達も居るよー!」
「子供だけじゃつまらないから、兄ちゃんと姉ちゃんもいるよ~、食レポもあるから、みんな楽しんでってねっ!」
天井から吊るされた裸電球が、薄暗い素掘りの洞窟の中を照らす。怪人達は画面におらず、上下して通路の中を進んでいく映像。
しばらく進むと、僅かに人の話す声がし、その者達は黙った。洞窟の一部側面にはセメントで固められ、洞窟沿いに鉄格子が見える。ここだけは厳重になっているようだ。
鉄格子の中が映される。中にいる拐われた人は3人。うちひとりは子供だ。
「見てご覧よ、エテモンキー、うまそうな人間だよなー!」
「俺は筋肉の付いていない子供…いや、女が柔らかそうだから女の太ももが良いな~」
ズームされる画面。
めそめそとする、髪色は黒く、長めの前髪を顔の真ん中で分けた青年。目つきは悪そうだが、めそめそとしていて、死が迫る状況を嘆いていた。