第55章 53.
『はぁ…(ああ、どうしよ…、)』
嫌われるかもしれない。遅れたというか来ない上にヒーローとして拐われているとか。
折角強くなっても、再生力を分けてやってもお前は結局足手まといだ、そんな女とか俺は勘弁だ、とか言われないかな?
協会からの支給品である携帯を確認するもずっと圏外。連絡が取れない。
腕を組んだまま、二の腕をぎゅっと掴む。
「あ?なんだよ、テレビの録画予約でも忘れたか?」
「家の施錠忘れとかです?」
『いや、その……今日の、デートなんだけど…──』
デートすっぽかして、原因が拉致された事で。せっかく強くなってもこんなだから嫌われたんじゃないか、と相談に乗って貰った。
一昨日の失態に次いでこの事態。呆れられているだろう。緊張感が足りなかった、武器もない状態こそが危険だっていうのに、浮かれポンチだった。大人の余裕のあるゾンビマン。ドジな私に見切りをつける可能性も……。
ぽかんとしたふたりは一度顔を合わせて、同じ様に首を傾げる。兄弟でもないのにね。
「あの、待って下さい、もう一回遡って"後日改めて"の辺り良いですか?」
『え?えっと、…雄しべと雌しべがって所?』
「ちげーわ、てか頭良い童帝でも流石に察してるだろ、俺も未成年ったって"そういう事"は分かるわ!」
赤くなりながらも言われる。
童帝君は10歳、金属バットは17歳だ。この中だと私が年が上となる。
それではっきりと朝から時間を掛けてセックスに勤しんでました、とか言えないので雄しべと雌しべの話で誤魔化したのだけれどそれは必要がなかったらしい。
変に気を使ってしまった、と更にしょんぼりしながらも、もう少し話を遡った言葉を発した。
『ヒーローを辞めろとは言わないから嫁にしたいって所?』
「「それ」」
言葉を被せる。
いや、言われたけれど後日時と場所を考えてって言ったことだし。昨日の朝と今日じゃ違うじゃないか、状況が。
と、思ったら違う事を指摘された。