第55章 53.
『ええっ!?辞めて移籍…?』
声は潜めながらも私は驚いてしまった。
「あ?俺以外にも居たのかよ?」
「え、もしかして金属バットさんも移籍ですか?」
どうやら、ヒーロー協会を辞め、童帝君の他にも金属バットもネオヒーローズに移籍するらしい。
『それはまた、寂しくなるね…』
童帝君とは割とプライベートで会う事もあったのだからそれは本心だった。
それにしても、たまたま居合わせた2人が移籍、となるともしかしたら他のヒーローもネオヒーローズに移籍する事は少なくないのかもしれない。
協会に関しては世間からのバッシングは結構あるし(やりすぎとか)、ヒーローに関してもバッシングがある(こちらも住宅の破壊とか、最近だとZ市壊滅についてだったか)
そんな中、新しい環境でヒーローが出来るとなると、移籍するのも考えたくなるんだろうな。
「会えない訳じゃないですから、時間が合う時はいつでも呼んで下さいよ。あ、でしたらハルカさんも移籍したらどうでしょうか?ゾンビマンさんも誘って」
腕を組んで考える。
移籍となると、協会への恩がある。
それに頼んでる武器や服もあるし、なによりゾンビマンが一緒の環境が一番だし。
うんうんと唸って、結論を出した。
『悪い噂は確かにあるけれど、協会にも恩があるし、ゾンビマンにも相談しておきたいな。だから、まだ移籍はなしって事で』
「ま、怪人協会の件で丁度区切りも良いって事で移籍するヒーローは多そうだな…、給料もネオヒーローズの方が高いんだろ?」
『急に新しい組織も湧いて、そっちに期待してしまうのかもね』
「無事、ここを抜け出したらゾンビマンさんとのデートで是非とも相談してくださいね」
にこにことしながら童帝君は言う。まず抜け出さなくてはいけないけれど、作戦はまだ始まれない。
抜け出せた所で…デートを再開した所で、そんな話を出来るんだろうか…?
というか、恐らく気合いれてるだろう、ゾンビマンは私が来ない事に流石に気がついているはずだ。