第53章 51.
だからって翌日の今日に急ぐのもどうかと思うけれど死活問題だし。
今日は確実に記念日になるしかない予感の中、私の食器は全て空になった。次にゴリラ、最後に博士が食べ終わって、私は洗い物をしながら考え事に耽った。
いろいろと失い奪われ続けたけれど、ここ数ヶ月でこんなに幸せになっても良いのだろうか?
不安になった。とても、満たされるという事に。夢なのか、騙されているんじゃないかと思うくらいに、僅かに恐ろしくもなる。でも…ゾンビマンは騙すような人じゃないから、私はそんな彼の傍に居たいと思う。
着替えて髪を整えて(アーマードゴリラが一部編み込みをしてくれた)準備万端な所に玄関に駆けてくる博士。
「ハルカ、これも持っていきなさい」
赤くて小さめのショルダーバック。中身が入っていて開けると随分とお世話になったレーションが詰まっている。
『これは…』
「今の君は武器が無い。己の能力だけで行くしか無いだろう。せめて私からはこれを持っていってほしい。おやつにもなるぞ?」
『ふふ、ありがと。確かに、レーションがたこ焼きってアイデアが斬新で美味しくて、戦闘時に凄く重宝したかも』
行ってきます、と手を振って待ち合わせの場所へと歩く。
昨日の事もあって博士を警戒してか、それともこれも計画の内なのか、ゾンビマンとは街中で会う約束をしていたのだ。
結構うきうきで内心はしゃいでは居た。警戒心も薄れていたのかもしれない、この怪人の多い時期に。
ふと、足元の何かに躓いて転びそうになった。
小石?木の根?なんだったのかは確認が出来ていない。
だって、転びそうになった瞬間、私は頭から何かを被せられて急に眠くなってしまったのだから。
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「ハルカのやつ、おせえな…、ジーナスに足止めでも食らってるのか?」
待ち合わせの時間にハルカが来ることはなく。電話も繋がる事もなく。博士に連絡する事にした。
「おい、ジーナス博士、いくら娘が可愛いからっていつまでもデートに行かせないとはどういう事だ?」
「…ハルカはとっくに向かっていってるぞ、何を言っているんだ君は」
「…は?」
俺は携帯でジーナスに繋いだまま、家へと走った。