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欠落の風雷暴

第51章 49.裏


青白い光とドォン、と言う空気を裂くような音。
鶏肉でも焼いているかのような肉の焼ける匂いが漂い、当たった怪人は首を押さえて泡を吹く。小型の恐竜が今の時代に生きていたらこんな感じなんだろう、という大きさだった。その大きさ故か、奇跡的に生きていたようだ。

もう一発を放つと今度こそ地面にその身体を横倒す。ゾンビマンと顔を合わせて近付くと、尻尾が伸縮性に優れていてそれでゾンビマンや地面を切り裂いたようだった。
その尻尾を摘んでゾンビマンは怪人を観察している。

「路地裏に入ってきた人間でも食おうとしていたのか?」
『人、食べそうな感じもあるしね…、殺気とかに反応したのかな?』

携帯を取り出して、協会に連絡をしておく。
ゾンビマンはそんな私をじっと見ていた。立ち上がったら太もも同士をくっつけている。流石に街中で全裸は嫌で、彼なりの対処法なんだと思う。
携帯をしまった所で、ゾンビマンは戦う前に置いておいた荷物を道の端から持ってきた。
ずっと持たせているけれど私の荷物だ。みっちり入っているし、職質されたらアウトだ。それだけじゃなく、ポケットにもどんなやつか分からないけれど女物の下着が入ってる。
時間はまだ早い。14時だった。

『早いけど、荷物いっぱいあるし帰る?』

私の指差す先に荷物。それを見てそんな事かとでも言いそうな目で視線を返された。

「だったら帰りに寄りたい所がある。家に帰るまで"休憩"していこうぜ」

普通の人ならブレイクタイムの方向に捉えるだろう一言だけれど、この男の場合は違う。
大きなため息を吐いて、私は一つ頷いた。

『しないって言ったのに…
仕方ないなぁ、適度に休憩でもしていきますか。その前に服、なんとかしてよ…』

「…善処する」

今にもあちこちズルズルと滑り落ちそうな服を見て、ああ、と短く返事をされた。
協会の者がここに来るでしょうし、街から外れた場所に移動を始める。
時間が早い分、きっと早く帰れるでしょう。それくらいの気持ちで私達は並んで足を進めていった。
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