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欠落の風雷暴

第50章 48.


『あんた達、怪人が居る、ここから離れて遠くへ逃げて!
……ねえ、これ、くっつければ良いの?』

私も同じ目に遭って二人同時にやられないよう、側面にしゃがみこんで奥側の身体を寄せる。
私がゾンビマンに聞いてもヒュウ、と肺から漏れる音しか聞こえない。
溢れた腸なども素手で腹部に詰める。温かく、血に塗れた臓器は手からつるつると滑って上手く持てない。仕込んでいたのか銃も出てきた。
怪人と戦い続ける内にグロテスクな事など慣れてしまったし、人体の構造なんてジーナス博士にたくさん教えてもらった。何なら、ホルマリン漬けの臓器も奇形も見慣れていた(10歳にも満たない私には怖かったけれど)
ただ、今の状態で臓器の位置とかはよく考えられないからとりあえずの処置だった。

全体の半分の再生ではなく、切断された所をくっつけたからか、蒸気を立ててすぐにくっつく。私の再生よりもとても早い。
上半身をむくりと起こしたゾンビマンは額から鼻の脇を通ってきた血液を舌でぺろりと舐め取った。ほぼ真ん中に攻撃を受けたために服も半分、大の字に手足を広げたらゼンラマンになる危ない状態だ。
…そのせいで内股になっている。

「サンキューな、ハルカ。
しかし、無駄に自己紹介するような頭空っぽタイプじゃない…まさに人類の敵って感じの敵だぞ、こいつは。俺が近付いただけで攻撃ときた。お前、周りの人間の避難はしたか?」

立ち上がるゾンビマンの横で辺りを見回す。
カメラを向ける人や、遠巻きから見ている人。そりゃあS級ヒーローが2人も一緒に行動していれば珍しいもんなんだろう。さっき呼びかけたよりもにじり寄るように、ここからの距離は短いような気もする。

『もっと遠くへ逃げて!それとも、あんた達も"ゾンビマンみたいになりたい"の?』

言葉の意味を理解した人はジリジリと後退していく。
どれくらいの攻撃範囲かは分からないけど、まあ、近すぎないならまだ良い方か。

「…こういうもんだぜ、戦わねぇヤツにとってはな」

ぼそっと私に聞こえる程度に呟いて路地裏に警戒しながらゾンビマンは近付く。
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