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欠落の風雷暴

第48章 46.


俺と組んでみろ、と言われた。

ぎこちなくナイフで肉をカットし、頭の中でリピートをする。
まだ熱を持つ鉄板が食材を焼き締める音。それが私達の居るテーブルのBGMであり、ナイフとフォークが鉄板や食器に当たるカチャカチャ音がそこに効果音を付けていく。
頬張る肉と、ライス。ひと噛みするごとに熱い肉汁と塩胡椒、ソースのおろし大根の入った爽やかさで美味しくて食が止まらない。ポテトがソースを染み込ませている、塩だけのフライドポテトも好きだけれど、こういったしっとりとした汁を吸ったポテトもこういう場で食べるからこそ美味しい。いや、お高い店だからか?と、フォークに刺して持ち上げて見つめる。

俺と、組んでみろ…か。
何口か食べていって、その何度も頭の中で繰り返して、ゾンビマンの発言に遅れて反応する。

『えっ、私、あんたと組むの!?』

「…そういう事を言ったつもりだったんだが」

反応おせーよ、と眼の前でカットしたステーキを食べている。
ゾンビマンと組む、か。
そもそもS級って組むことをしない。怪人協会に突入の際はたまたま組む、という事であった。
S級はそれぞれが特殊である故に組むという事はせず、単独行動が多い(問題も多い)。知っている限りだとジェノスはサイタマと組んでいる、というか師弟であるから、サイタマの手を煩わせないように自分から戦いに行ったりしている。
アトミック侍はA級ヒーローの弟子を持ち、弟子と共に行動をしていた。また、弱い人とは組まない、と本人が言っているし。
童帝はサポートをしているけれど、共に戦うという事はしていないし、タツマキはなんかもう、一人で蹴散らしている。

ちょっとだけ、風神の時にそれぞれのヒーローがコンビを組んだ事はあったけれど結局は私は吹き飛ばられて共闘という展開にはならなかった。離れ離れで、ソロ活動と言えるようなものだった。

もぐもぐと咀嚼をしながら、目の前で同じくもぐもぐと咀嚼するゾンビマンを覗き込む。

「…なんだ?」

『いや、あんたとちゃんと組むって事してなかったからこれまた新鮮ではあるけれど……私の巻き添えになるよ?』

充分に実力を出すとすれば、前線に立つゾンビマンは感電なり鎌鼬でボロボロになりそうだ。
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