第42章 40.裏
むちっとした感触が私の顔にぶつかる。多分ゾンビマンの胸の筋肉あたりだろう。布団の中でペタペタと触ると、どうやら顔だけ布団の外に出しているようで。
腹や下乳房の辺りにペチャッと硬い何かがぶつかってくる。位置的に性器かな…。
私の足首辺りはスースーするから、そこは外気に触れているようだ。
「お前はそのままで居ろ」
『ん、分かった…!』
足音が部屋の前で止まり、ふすまの開ける音。僅かな沈黙。
「……何をやってるんだ」
「見た通りの事をやってるんだよ」
「いや、そうじゃなくてだ、ゾンビマン」
ため息や呆れたような、冷静な声がする。
それに対してゾンビマンは淡々と答えていっている。
「私の娘に何をしているのか、と聞いているんだがね?」
「だから見た通りの事だ。遺伝子を残す行為…種の繁栄だぜ?これは愛情表現だけでなく、子供を生産するためにしている。もちろん、合意の上でだぞ」
「なるほど、既成事実を作ると言うんだな?」
どきどきと緊張する。
声を出す度に顔の前にある胸が膨らむ。頭上の喉の振動が若干心地良くもあった。
「ハルカ、」
ジーナス博士が呼びかける。
もぞもぞと頭だけを出す。頭上にはゾンビマンの顔がある。見上げるように部屋の出入り口を見ると、逆さまに映るのは腕を組んで仁王立ちする、はんてんを着たジーナス博士が立っていた。
「……起きたかい?」
『…はい、おはようございます』
「おかえり」
『ただいま…』
ふっ、と笑ったのもつかの間。
もとの表情に戻しながら、で、と言葉を続ける。
「起きて早々に何をしてるんだ?」
『……その、…えっちな事、です』
語尾の小さくなる言葉と、顔面に集まる熱。
ンフッ、と目の前の男が吹き出して笑ったので頭突きをすると黙る。顎に当たったようで、ガチッという音が聞こえた。
そんな様子を見ていた博士はため息を吐いて腕を組むのを解いた。
「壁が薄いから、くれぐれもこの家では"騒がない様に"気を付けてしなさい。ハルカが同意をしているのなら、私には文句は言えないよ。君は未成年とはいえ、大人だからね…」
「……」
ふすまを締めて、去っていく足音。
その音が通り過ぎるのを見届けて布団から顔を出した状態の私達は顔を見合わせた。
『結局…良いんだ?』
「(良いのかよ…ジーナス…)」