第42章 40.裏
「ハルカに言っておかないといけない事がある」
互いに布団から上半身を起こし、私が纏うパーカーを自分で脱いでいる時だった。
脱ぎ終えたパーカーを受け取って姿勢を正し、ゾンビマンが告白をする。
「俺の種は数はそこそこあるし、生存は長い。が…元気がねぇ。元気がない分子供が作りにくいと思う」
『……あのさ、これからセックスするって時になんつー話してんの…』
"今から膣内射精します"と宣伝するようなものだ。
そういえば、近くに避妊具もないし、これ、雰囲気で性行為をするって事じゃないんだろうか?
パーカーの下はブラジャーであって、目の前の男は下着に納まる胸元…、そこに視線が行っている。餌を出された犬猫のようで、待てが出来無さそうなその様子を見てため息を吐いた。
昨日この前の件を怒ったばかりだというのに…!
『私の中に出すって言うの?』
「ヒーローをやめろとは言わん。だが、お前の事を嫁にしたい」
『………は?』
突然の事に戸惑う。
いや、最後の行為の時の強引な事とか事後報告だったりで嫌だったけれど、これはこれで戸惑う。
どっきりとか、そういうんじゃないだろうか?
「嫌だったか…?」
私のパーカーを布団の脇にそっと置いて、私の目を見た。
嫌じゃない。嬉しいし、心臓が跳ねるようにバクバクと歓声を上げるように騒いでる。嫌じゃないけど…。
『そういう、大事な事は…時と場所を考えて欲しいっていうか…ほら、記憶に残る事でしょ?プロポーズっていうのって』
その瞳から視線を反らす。今までクソみたいな人生をダラダラと、幸せを諦めていた自分だけれども、こういう…きっと一生に一度しかなさそうな事は、場に流された告白で終わるのはもったいないと思ってしまった。
目の前にいる男は小さく笑った。
「なんだ、意外とロマンチストだったんだな。じゃあ…後日改めてプロポーズさせてもらうぜ。それで、今からは普通に抱いてもいいか?」
『…ゴム無いでしょ』
「なんだよ、例えデキても薄情な男みたいにお前を捨てたりはしねぇぞ?」
はぁ。
私を捨てること、絶対にしないもんね、知ってた。昔からそうだと知ってる。はぐれてからもずっとどこかで探してくれていたんだ。