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欠落の風雷暴

第41章 39.


長い夢を見ていたみたいに、瞼を開けた。
私は布団に寝ていた。床は硬い嗅いだことのある匂い……ああ、そうだここはたこやきの家、ジーナス博士の家だ。

もぞりと体を動かす。
手には点滴が繋がれている。引っこ抜くと、刺さっていた場所から血が流れ、開いた穴がジュウ、と蒸気を少し出して修復していく…回復力が戻っている。
布団を汚さないように、つぅ、と流れる自分の血液を舐め取る。最近よく口にする、鉄の味。

ムクリと起きて、背伸びをしてみる。肩がごきっと音を立てた。外はまだ暗く、隣にも布団が敷いてあって、そこに誰かが寝ているのに気がついた。
カーテンを少し開けて和室に明かりを少しばかり取り入れる。先ほどの点滴の道具を部屋の脇に寄せて片付けた。

私が寝かされていた隣。すやすやと寝息を立てている。埋もれる布団を少しめくってジーナス博士かどうかを確認したら、肩を落とす羽目になった。
……博士は別室で眠ってるみたいだ。私の側に居たのはゾンビマン。向こう側を向いて眠っていた。

どうやら私はぐっすりと寝ていたみたいだ。体に不調はなく、失った手首も戻っていた。夢でも見ていたみたいで、手の甲と手の平をじっくりと見た。
服は…下着から全て知らない服。上下ともクリーム色のパーカー、下着は上下とも黒を装着させられていた。風神の骨の入ったペンタンドは揺れる。これは無事だったのかと安心した。
髪は銀と白の間のいつもの色…、あの赤黒い血まみれじゃなくて多分、全身ひっくるめて洗われたんだと思う。ここにはアーマードゴリラも入れる風呂や、培養槽とかあるし。
眠気もなく、空腹感は…ガロウが現れた辺りほどは無く。むしろ、日常レベルだ。時計は早朝の5時28分、まだまだ早いようで、贅沢にも私は二度寝をしようと布団を捲る。捲ったのは自身の入っていた布団ではなく、隣の布団だ。

そっと起こさないように潜り込んで、その背に張り付く。深呼吸をすると黒いタンクトップに染み付いているらしい、煙草の匂いがする。

──本当に、あれがすべて夢であったら良いのに。

ぐりぐりと大きな背に顔を押し付けて、ひとりその背に甘えた。
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