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欠落の風雷暴

第39章 37.


ハルカの近くへと近付く。俺の恋人は瓦礫に膝を付き、ずっと下の"何か"を攻撃している。抑えられない力が漏れ出し、周囲に放電をし続けていた。
服のない俺はすぐに感電した。
膝をつく、這いつくばる。自分の心臓が本来ではありえない動きをしている…感電の所為か。
死なないおかげでこうして動けてはいるが。

ハルカから離れた瓦礫に見覚えのある柄が見えた。刀身は肉と瓦礫を繰り返し刺し続けて折れたんだろう、あれほどに大切に使っていてももう使うことができなくなり、じゃあ今はどうしているのかと、痺れる体で近付いた。

『お前のせいでっ、お前のせいでっ、お前が、お前が…っあああっっ!
死ね!死ね、死ねっ!』

ひたすらに涙を零し、罵声を浴びせながら元の形状すらも分からない赤いものを殴り続けていた。
赤黒い液体、ブツブツと細かくなった様々な臓器、筋肉、折れた骨…焼けた焦げ茶色の肉に、ぷるんとした大量の皮下脂肪。ハルカは手首程度の怪我だ、きっとあの敵の腹に付いていた持ち物だろう。

その攻撃への返り血か、顔も服も赤く、涙が伝った所は肌色を覗かせる。
殴る拳は蒸気を出している。よくみれば赤くて気が付かなかった。手首の辺りまでが無くなっている。
脇差が無くなってもずっと能力を使いながら素手で殴っていたんだろう。指も手も無くなって、手首の骨も今も殴って削れていっている。
もう片手も同じ状況だ。片手が駄目になって、もう片手と繰り返していたんだろう。拳では足りず、自身の骨でガツガツと殴り続けていた。

『お前の、お前の、』
「もうよせ、ハルカ」

そのボロボロの手を掴む。生暖かい血が手首のあった傷口からぐちゅりと溢れ、蒸気を放つ。掴んだ俺の手を、指先を溢れた血が伝う。
止めに入った事によって周りに無差別に放っていた放電が消えた。
息が荒く、フーッフーッと肩が上下していた。相当興奮しているようだ。

『ぞん、』
「とっくに死んでる。これ以上お前の体が傷付いても意味がねぇよ」

俺と同じく再生力のあるせいか、それとも元々か。涙は増して止まらない。
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