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欠落の風雷暴

第36章 34.ブサイク大統領の発言が激裏


そっと、ガタガタを震えた体を動かす。動かなかったのは超能力じゃなくて、過去のトラウマの恐怖だったらしい。
上半身を起こして自分の両手の平を見る。細かくカタカタと震えて、体温が低くなっていた。

『ダイ、ジョ…ぶ…、だいじょうぶ…だいじょうぶ、大丈夫…私は、大丈夫…うん、大丈夫』

暗示を掛けるように自分に喝を入れて、ジェノスを見上げた。
僅かに滲む世界の中、少しだけ安心したサイボーグの表情筋が緩む。

「…なら、大丈夫だな」

その一言はとても優しい声色で、泣きそうになる。
そんなやりとりも近くからの舌打ちで中断された。

「てめぇ、今の瞬間俺の標的はお前に変わったぞ。頭からつま先まで丁寧にコナゴナにしてやるよ」

メキメキと音を立て、時には筋肉がぼこぼこと沸き立ち、血管か筋が切れるような音。
ブサイクは変形していく。ブサイクさはそのままに、筋力を付けて巨大化していく。引きちぎられた腕も再生をしている。こいつの完全体という事だろうか。

「肉体が変形していく…自身の細胞の変異をコントロールできるというのか…」
「ぐへへへっ冷静でいられるのも今だけだぜぇ鉄クズぅ!お楽しみを邪魔しやがって…鬼サイボーグ、脳味噌は自前なんだろ?その小綺麗なフェイスの下がどうなってるのか興味津々だぜ!
77号チャンは、鉄クズの解体後にたーっぷり可愛がってやるよぉ、ぐへっ」

拳を握りしめる。迫りくるかと思った所、ブサイクな顔はよりひしゃげる。
ドドド、と打ち込んでいるその主を見た。
軽い身のこなし、両手が目で捉え切れにほどにあいつに打ち込んでいる、白髪の老人。

──シルバーファングだ。
きっと瓦礫にさっきまで埋もれていたんだろうか。バングは肩の小石を払い、再び構えた。
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