第1章 もどかしい
広い敷地のせいで、移動だけでカロリーを消費する。ヒーロー科じゃない私はすぐ疲れてしまう。かけていた足を休め、もたもたと歩いてしまう。
そこの建物を曲がればグラウンド。少しがやがやしてた。私はまた駆けだした。
「――っ死ねぇぇぇぇぇぇぇ!」
曲がってすぐに、つんつんした髪型の男の子がソフトボールを大きく振りかぶって投げようとしているのが見えた。
私の理性は悲鳴を上げていた。本当にかっこいい。
・・・ いた。見つけた。君を見つけた…! ・・・
少し駆けだした、その時、目の前が真っ白になった。
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瞼が重たくて上がらない。
誰かの話す声がする。
「きっとすぐ起きると思うよ」
「本当ですか? 良かったです!」
「心配いらないよ。教室におかえり」
「っはい! でもこの人は…?朝は居なかった…」
「医療科の生徒だ。君と同じクラスだよ。きっとイレイザーヘッドから紹介がある。いいからおかえり」
「い、医療科…? あっはい!」
失礼しましたと声がして、戸の閉まる音が聞こえた。
「起きたかい?」
近くで声がする。朝聞いた声だ。ここは保健室なのかな。
「はい…」
瞼が明けられるようになった。私はゆっくりと体を起こした。
「まさか倒れるなんてね。個性把握テストの帰りにグラウンド脇で倒れていたそうじゃないか。どうしたんだい?」
じゃあ、何十分も倒れていたことになる。…彼は私に気づいてくれたのかな。
「どうしたのか、私にもわかりません。貧血かな…」
きっと彼を見て倒れたんだとわかるけど、そんなこと言えるわけがない。
適当に誤魔化して保健室をあとにした。