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夢幻-改-

第1章 壱





応援が来てくれたことによって初の任務が終わった。
隠の人達が即座に事後処理を始めていた。



その光景をただぼんやりと眺める事しかできない。



「いやぁっ!!助けてっ…助けてぇっ!!!」



先程まで助けを求めていた仲間の絶望した表情や叫びがこびりついて離れなかった、鬼に仲間が食われる姿を恐怖で足がすくみ呆然と眺める事しか出来なかった。



思い出すだけで胃の奥から込み上げるものを感じる。
刀の色も変わらない、呼吸も上手く使えない、目の前の仲間ですら救えない己がこんな状態でよく鬼殺隊士になれたものだ。




隠「貴女も怪我をしているわね、待ってて今手当をするから。」




隠の人が優しく声をかけてきた。
木に凭れながら手当を受ける、テキパキとした処置に流石だなと思う。



隠「私達隠は剣術の才に恵まれなかったの。凄く悔しかったわ、鬼殺隊士になったのにってずっと思ってた。それでも貴女達剣士と気持ちは同じよ。鬼のいない世界を願いながら事後処理任務をする。それが私達の出来る精一杯だから。」



『………。』



隠の人の声は凛としていて隠としての意志を強く感じる。
そうか、隠の人達は剣術に恵まれなかった人達を元に構成されていたのか。

ぼんやり手当を受けながら話を聞いていたら強く手を握られた。
虚ろな瞳のまま隠を見つめれば強い眼差しで見つめ返される。



隠「貴女には剣術の才能が絶対にある、鬼殺隊の剣士になれたんだもの。だから今の現状に絶望して全てを見失って投げ出しちゃだめよ。上から物言ってごめんなさい、私他にも仕事があるから行くわね。」



そう言って去っていく彼女の背に向けていた視線を握られていた己の手に移す。
温かかったな、あの人の手は。



掌をきつく握りしめて自分の膝に顔を埋めた。



私は弱い。




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