第4章 憲紀君
「今のが術式の作動条件か?」
『うん…痛いの、無くなった?』
そう彼を見つめていれば、目元がぴくりと動いて、
「…いや、まだだ」
『ひゃっ!…んぅ、んっ…!』
そう、後頭部を押さえられて唇を重ねられる。
やはり初めて使う術式が成功するなんて、甘い世界では無いのだと思いながらも、身体の呪力を整える。
見た目は治っても、痛みはまだ消えないんだ…
!?
術式を使うために、彼の口内に再び自身の唾液を移そうとするが、それは私の口内に侵入してきた彼の舌によって阻止される。
柔らかなその感触や、顔にかかる彼の息に背中にぞくりと電流のような刺激が走る。
『んっ、は…のり、と…ちゅ…』
待って、そう言おうと思うのに、止まらないただの深いキス。
こんな風に乱されては反転術式を使う事なんて出来はしなくて…
なに、これ…
気持ちいい。
「ちゅ…まだ、治らないが?」
そう彼の口角が上がっていることに気付き、ぞくりと揺れる身体。
絶対、もう、治ってる…!
真面目でいつも丁寧な彼の、初めて見る意地悪な顔に、何かを期待してしまう。
『んぅ…ぁ…』
「もう一度、良いか?」