第4章 憲紀君
3つ目を知っているのは五条先生と私だけ。
"こんなロマンチックな術式、みんなに知らせたらもったいないよ〜"
そう先生が言って、上には黙っていてくれたのだ。
ファーストキスもまだな私に気を使ってくれた、のだと信じたい。
これを使ったことは一度もなくて、正直、成功するかどうかなんて分からない。
けれど、
『あの、私…本当は、かなり高度な反転術式が使えるの…
でも、凄い特殊だから…他の人には言わないで欲しいんだけど』
「そう、だったのか?分かった、誰にも言わないと約束しよう」
『目、閉じてて、ね』
あぁ、と短く返事をして目を閉じる憲紀。
緊張し苦しくなる胸を片手で押さえて、彼にゆっくりと近付き唇を重ねる。
彼に良くなって欲しい、その一心で。
術式の本能なのか、どうすればいいのかが自然と分かった。
彼の口内に舌を侵入させて、溜めていた唾液を舌で運んで、絡ませる。
その行為を数回繰り返して、ゆっくり離れれば、
「っ!何をっ…」
感情の分かりにくい彼が驚いているのが分かり、そのおかげか、反対に私の緊張は解けて目を細める。
私、この人のこと、好きかもしれない…
『これ、取るね?』
しゅるりと彼の包帯をとって確認すれば、反転術式は成功していて、誰にも言わないでと、もう一度念を押す。