第4章 憲紀君
大きく速くなっていく心臓の鼓動に、彼は気付いてしまっているだろうか。
キスした時よりも、抱きしめられた時よりも緊張する…
ゆっくりと彼を見上げれば、フッと鼻で笑われて、
『きゃあっ!……んっ』
急に横抱きにされて、優しくベッドへ降ろされる。
そして憲紀も同じベッドに横になり私を方を向き、口を開く。
「すまない。まだ、横になっていないと頭痛がする」
『え、だ、大丈夫?
な、なら!尚更、抱き上げなくても…!』
「私がそうしたかった」
!!
それは、ずるいよ…
彼の頭に巻かれている包帯の上に、そっと手を置き、自分が呪術高専の存在を知った時のことを思い出す。
私を高専にスカウトした五条先生は、人の術式を見抜くことが出来る。
あの時の私は、自分の出来ることを明確に分かっていなくて、ただ、みんなに見えていない呪いを祓うことが出来る、ということしか分かっていなかった。
五条先生が教えてくれた、私の持つ反転術式の使い方。
1.唾液を治したい傷の近く、またはその上に塗布すること。
2.自身を治す場合は、一度誰かに唾液を渡すこと。
3.唾液を口渡しで相手に飲み込ませた場合、難病をも治すほどの高度な反転をもたらすことが出来ること。