第4章 憲紀君
『そ、それって…!』
「頼んでいたのだ」
『あれ…わ、私のお父さんの署名!?』
彼が机に広げたその用紙は間違えなく、婚姻届。
よく見れば、ほとんどの欄が記入済み。
夫になる人の欄には、加茂憲紀、と。
そして、親族の署名欄も埋まっている。
確か私達2人とも、もう18だけど…!
『まさか…五条、先生?』
「あぁ。虎杖に手を出さない事を条件にされたがな」
さすが、すぎる…。
いつも適当そう…いや、基本的に大体そうなのだが、やっぱりあの先生は頼りになるし、生徒に甘い。
差し出したペンを受け取ってもらえなかったのは、残す欄は私が書くべき欄だから。
それにしても早過ぎる展開についていけずに、彼を見上げて、
『い、今…?』
そう問えば、頭を優しく撫でられ、額同士をくっつけられる。
!!
明日の命を保証出来ないこの呪術界で、甘い恋愛を夢見ている訳ではないし、彼以外の人と籍を入れたいなどと思ったことはない。
けれど、今、なの…?
「早く、琴音を私のものにしたい。
…だが、嫌ならいくらでも待つから安心しろ」