第4章 憲紀君
生徒の中では憲紀君しか知らない、私の反転術式の使い方を確認されて、彼に掴まりながらも、疑問を抱く。
なんで、今、それ聞いたの?
「狗巻、伏黒、5秒時間を稼いでくれ!」
「今ですか!?…分かりました」
「しゃけ」
途端2人は立ち止まって振り返り、呪霊と対峙する。
『なん…んぅっ!』
何が起こったか理解した時には、もう彼の唇は離れていて、そのまま私の怪我した足元に押しつけられるそれ。
!!
今、ここで私の足を治すためだったの!?
急いで呪力を操作し自身の怪我を治しながら、熱くなった顔を片腕で隠す。
私の反転術式は、硝子さんのように手をかざしたら出来るものではなく、私自身の唾液が必要となる。
それは他者へ使う場合は直接自分が口付けなければならず、自身を治す場合は、なんと面倒なことに、1度他者の口内に唾液を移し、塗布してもらう必要があるのだ。
突然重なった憲紀君の唇から伸びてきた舌が、私の口内の唾液を素早く絡めとった、ということだ。
これはファーストキスに含まれるのだろうかと考えながらも、治った足で立ち上がり、彼に掴まる。
『ありがとう…ごめんね』