第4章 憲紀君
『何あれ、特級!?いや、それ以上…』
「しゃけ…!」
そしてすぐさま足元に迫ってくる木の根っこのような呪力の塊。
まずい。
準一級の狗巻君の呪言がほとんど効いてない。
五条先生に連絡しなきゃ…なのに…!
ドゴォッ!
どんな森の大樹だよとツッコミたくなるような、うねり、伸びてくる根が一気に生み出され、近くの建物の屋根に跳ぶ。
逃げられる場所を確認しながら走っていれば、見慣れた姿を見つける。
『の、憲紀君と伏黒君!?』
「【逃、げ、ろ】」
狗巻君の呪言のおかげか、本人達の危機感からか、2人ともその場から離れ、合流する。
突如降りた帳。
もう、訳が分からない。
枯れかけた狗巻君の喉に目をやり、少し考えた末に彼の両肩に手を置いて少し見上げる。
『伏黒君、五条先生に連絡して。あと、憲紀君、あっち向いてて。
狗巻君…ごめんね、目、閉じてて。一応、反転術式使えるの』
「?……!!」
よりにもよって、憲紀君がいるのに…
けれど、あり得ない強さの呪霊が高専内に侵入しているという異常事態。
使わないわけにはいかなかった。
背伸びして、彼の喉元にキスを落とし舐める。
ごめんね、こんな術式で。
そう心の中で呟いて離れれば、顔を赤くした狗巻が、
「ツ、ツナマヨ…」
良かった、いつもの声に戻って。
ありがとうって、言っているのかな。