第3章 五条君
思わず目を見開いて、ごくりと息を呑む。
ゆっくりと近付いてきた、悟の綺麗すぎる瞳に動けなくなってしまう。
静かな部屋に私の心臓の音が響き渡っているような気がする。
この状況が理解出来なさすぎる!
…というか、一瞬で森からこの部屋まで移動しちゃってたけど、あれ、どういう事!?
「なんか余計な事考えてねぇ?」
『へ!?あ、いや、そんな…ぁう』
彼の指先に顎を持たれて、自然と絡み合う視線に心臓は爆発寸前だった。
ゆっくりと上がる彼の口角に背中から冷たい汗が湧き出る。
『も、離れ、て…んっ!?!?』
「あっま、なんか食った?
ま、俺好みだから良いけど。ちゅ」
『んんっ…!んぁ、ふ…』
重なる唇に頭が真っ白になる。
何をもがこうが、今のが私のファーストキスになってしまったわけで、驚く隙も与えられずに再び何度も何度も重ねられる唇。
抵抗しようにも、微量に流れている彼の呪力のせいか、それともただの驚きとときめきのせいなのか、上手く身体が動かない。
初めて、なのに…!
ゆっくりと優しく、私の口内を確かめるように動く彼の舌使いは、きっと凄く上手で、何も分からない私でも何かを期待してしまう。