第3章 五条君
腰にまわっている五条君…いや、悟の腕が緩んでいることを確認すると、足に呪力を込めて夏油君の近くまで跳んで着地する。
『そ、そんなの、勝手すぎるよ!
って、あれ?…きゃあっ!』
「逃がさねぇよ?」
着地しながら彼がいた場所を見ればそこにはもう彼の姿は無くて、気付けば私の真横に立っていたのだ。
い、いや、分かってたよ!?絶対勝てないって
でも、夏油君に助けを求めればって思ったのに、助けを求める間もないなんて…!
「悪いね琴音。次の勝負はちゃんと勝つからさ」
『そ、そういう問題じゃっ…ひっ、や、分かった、自分で歩くから!下ろして!』
ふーん?
そう彼が言っているような気がして心臓がキリキリする。
お姫様抱っこ、今日で2回目なんですけど…。
「はーい、じゃ、俺の部屋、跳ぶから」
『へ、ひっ…』
片手で彼の学ランを掴みもう片方の手で口元を覆えば、一瞬の真っ白な光の後に、生活感漂う個室に着いていたんだ。