第3章 五条君
「ところで悟、それはどういう事かな?」
「まだ勝負はついてねーだろ、琴音から離れろ」
『勝負?』
「今から俺が勝つから見てなって」
私だけ仲間外れ、それにガン無視された…
…夏油君と硝子ちゃん舌打ちしてる?
少しだけショックを受けていると、密着していた五条君が少し離れて私の顔を至近距離で覗き込む。
サングラスの奥の綺麗すぎる瞳に、こんな状況でも心臓が高鳴ってしまう。
「俺、琴音のこと助けたよね?」
『あ、うん!ありがとう、本当に』
「じゃあさ、ちょっと俺のお願い聞いて」
『え、えぇ…』
ニヤリと笑った目の前の彼。
いつもより少し丁寧な言い方がさらにこわい。
背中に冷たい汗が流れるのを感じる。
あの時、五条君が助けてくれなければ、今ごろ私は酷い目に遭っていたのは間違い無いという事が分かっているから、さらに断り辛い。
『わ、私に、できる、事でしたら…』
そう私が呟くと同時に、五条君越しに立っている2人がため息をつくのが見えた。
…え、もしかして、私、やばい事言っちゃった!?
慌てて取り消そうと口を開くが、声を発したのは五条君の方が先で、
「これからは、五条君じゃなくて、悟って呼べよ?」