第2章 狗巻先輩
「しゃ、しゃけ?」
『えっと…ほんと、です…』
本当に?
そう聞かれたと直感して答えれば、こちらを見る先輩の頬がさらに赤く染まっていく。
ずるすぎる…
呪いを祓う時の先輩はあんなにカッコ良いのに、こんなに可愛い反応をするなんて。
心臓がきゅっと程よく締まるような感覚にくらくらしていると、先輩の片方の掌が私の頬に添えられて、先輩の顔が近付いてくる。
!!
『…ん』
ほんの数秒重なる唇に鼓動が大きくなり、先輩に見せられたスマホを見れば、
[これも嫌じゃない?]
と書いてあり、大きく頷けば優しく微笑まれ引き寄せられる。
うるさくなり過ぎている自分の心臓の音が、先輩に聞こえてしまっているんじゃないかと心配になったけれど、先輩の腕の中の心地良さに目を細めてしまう。
『せんぱ…』
「好きだよ、琴音」
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
語彙をおにぎりの具に絞っている先輩に、まさか名前を呼ばれる日が来るなんて思ってもいなかった。
そもそも、メッセージのやりとりでは神楽って呼ばれてたし…。
ましては、先輩が私のこと……!