第7章 伏黒君
伊地知さんが後部座席の扉を開いてくれて、そこに神楽を座らせる。なるべく五条先生に彼女の顔を見せないようにして。
座席に降ろせば、至近距離で目が合って彼女の肩がびくりと揺れる。
『意識しすぎ』
「!…だって」
小声でそう言えば、慌てて口を開いた彼女が可愛すぎてクスリと笑ってしまう。
顔、まだ赤いな
…車の外で時間稼がねぇと。
扉をパタリと閉じて外にいる伊地知さんと五条先生に向き直ると、口角を上げた五条先生が口を開いて、
「ここ、ラブホだけど大丈夫だった?」
「ちょっ!五条さん…!彼らはまだ!」
『心配するくらいならこんな場所の任務あてないで下さいよ』
「可愛い生徒の成長のためだよ〜」
『ここの呪霊の見た目、かなりキモかったんですけど』
まあまあ〜と俺の肩を叩いて楽しそうにしている五条先生に、伊地知さんと俺の大きな溜め息が重なる。
本当に…何でこの人先生になれたんだ?
そう心の中で呆れていれば、再び五条先生が口を開いて、
「真面目な琴音が腰抜かすだなんて、僕も見てみたかったなぁ」
「ご、五条さん…!神楽さんのためにも早く高専に帰りましょう!」
そんな軽い言葉に、さすがに苛立ちが込み上げて来て2人より早く車に乗り込んだんだ。
伏黒side.end