第7章 伏黒君
ドクンと大きな音を立てた心臓を押さえるように、自分の学ランをぎゅっと握ってしまう。
ここってラブホテル、だったの…?
確かに言われてみれば、さっき対峙した呪霊は、背筋が凍るような生理的に受け入れ難い見た目で、"情欲の呪い"という型にぴったりな気がしてしまう。
ラブホテルという名前とその用途は何となく知っているが、具体的に何をすれば良いのかは知らないし…
伏黒君と、私が…?
そう少し想像しただけで、申し訳なさが溢れてくる。
伏黒君は、静かで、背が高くて、カッコよくて、強くて優しい。
どう考えても私とでは全く釣り合っていないし、恋人達がしているその行為を…なんて、あり得ない。
伏黒君、睫毛長いなぁ…
「残念だが何回その紙を見ても、同じ意味が頭に流れ込んでくる」
『そ、そっかぁ…この部屋って、術式使っても大丈夫かな?』
「あぁ。さっき何体か召喚したが無理だった」
『えぇ…希望少なそうだけど、とりあえず私も使ってみるね』
そう言いながら両手で形を作り、呪力を何も無い壁に繰り出してみる。
びくともしない…!
あれ?壁に当たる前に呪力が消えていってる?
強い呪力でも太刀打ち出来ないって、こと…?
そう茫然と立ち尽くしていれば、伏黒君の手が私の肩に添えられてゆっくりそちらを向く。
『全然だめそう…』
「なぁ神楽……経験ある?」