第6章 七海さん
「そうしたいのは山々なんですが」
『?だめ、なんですか?』
そう首を傾げれば、ゆっくり私から離れていく七海さん。
離れていく距離が切なくて、手を伸ばそうとしてハッとする。
誰かの、視線を感じる…!?
眉間に手を当てて、深く息を吐き出す七海さんが、病室の扉に向かって歩き出す。
『ご、五条先生?!』
「あっちゃー、バレちゃった?」
先生、帰ったんじゃなかったの…?
それに、先生にこんな事言うのは失礼だけど、邪魔された…!?
口角を上げた五条先生が私のベッドに腰掛け、私の頭を撫でる。
七海さんの眉間に少し皺が寄ったような気がして、七海さんに手を伸ばそうとすれば、先生にその手を掴まれてしまう。
え、っと、先生…?
距離が、いつも以上に近い気が…
「五条さん、このことは…」
「分かってるってー!内密にね!
あ、七海ぃ、未成年に手出しちゃダメだからね?」
「…家入さんより貴方のがまともな事を仰るんですね。分かっていますよ」
『えぇ….私、手、出してもらえないの?』
そう2人を見上げれば、息を呑むのが見えて、訳もわからず再び口を開く。
『七海さん…?』