第6章 七海さん
七海side
『救護班!救急車を急いで』
「えっ!いや、でも帳が…!」
『今の祓ったのが京都に放たれた呪霊の最後です。帳は上がり始めています』
「!…はい!神楽さんをこちらに!」
意中の相手の大怪我を目の前にして、柄にもなく大きな声で人を呼びつけてしまった。頭から血を流す神楽さんをそっと持ち上げ、指定された場所へ寝かせる。
まさか最後の最後に救護班のところにまで呪霊がやってくるなんて
そう頭を抱えていれば、自身の身体も限界に近い事を思い出して、彼女の寝ている横に腰を下ろした。
『どうかご無事で…』
そう祈りながら目を閉じた。
彼女と出会ったのは、2年と8ヶ月前。
五条さんに高専1年生の力量を見てやって欲しいと頼まれたあの日だ。
何事にも一生懸命取り組む優秀な生徒だと思ってはいたが、彼女への感情が他の人とは違うものとなったのは、身近な仲間の死を必死に乗り越える姿を見た時だった。
私は高専生の時、灰崎の死を目の前にして何もかも投げ出した。
だが彼女は、ひとしきり泣いて泣いて泣いた後に自分に稽古を頼んできた。
"七海さんくらい強くならないと何も守れないんです"
『十分過ぎるほど仲間達を守っていましたよ、貴方は』
「ほんと、ですか?」
『!?』
七海side.end