第6章 七海さん
いつもより大きく早い鼓動に、掌が汗ばんでいくのが分かった。
顔も少し熱くなっている気がする。
恥ずかしいから気付かれたくないと思うのに、七海さんは私の目と鼻の先にいるわけで…
勢いで、言っちゃったよ…!
数秒しか経っていないはずなのに、この沈黙に耐えられなくて無理矢理笑顔を作る。
『じゃあ、治しますね!』
そう言いながら彼の頬に添えていた手を、治りかけの背中の傷のそばに置いた。
恥ずかしさと焦りが混ざった複雑な気持ちを抱えながらも、傷に口付けを落として治していく。
2人とも何も話さなかったため、沈黙のまま、私が七海さんの背中にキスする音だけが響いていた。
『終わりました。少し強引にしてごめんなさい』
そう彼を縛っていた術を解くと、ゆっくり立ち上がった上裸のままの彼が私に向き直る。
七海、さん…?
「神楽さん、ありがとうございました。それから…」
『な、七海さん?!』
「さっき自分が私に何をしたか分かっていますか?
大人にああいう事をすると、どうなるか教えてあげないといけないようですね」
突然横抱きにされ、頭の中が大パニックになる。
私を丁寧に保健室のベッドに降ろすと、私の上に馬乗りになって眼鏡を外す七海さん。
上裸の七海さん、色気が凄すぎる。